Name: 【妄想】逆さ撮りパンチラ023 彼女が立ち止まった理由について、僕はまだ答えを知らない
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彼女が足を止めたのは、ちょうど文具売り場の角だった。
蛍光灯が天井から静かに降り注ぎ、花柄のスカートの上に淡い影を落としていた。
僕はその瞬間、ふと世界がワンテンポ遅れたような錯覚を覚えた。
まるで、音楽が一小節だけ休符を挟んだような、そんな静けさだった。

彼女は何も言わなかった。
ただ、少しだけこちらに顔を向け、遠くを見るような眼差しを浮かべていた。
その表情には、わずかに不安と、それと等しいだけの優しさが滲んでいた。
誰かを探しているのか、それともすでに失ってしまった誰かの面影を追っているのか。
僕にはわからなかったし、たぶん彼女自身にも明確な答えはなかったのだと思う。

水色のブラウスは控えめな光を受けて、まるで春先の空のような色合いを帯びていた。
花柄のスカートはどこか懐かしい雰囲気を醸し出していた。
それは、まだ「手紙」というものが人と人の距離をつなげていた時代の名残のようにも感じられた。
彼女の存在そのものが、どこか時間の隙間にひっそりと咲いた小さな記憶のようで、
僕は思わず言葉を失ってしまった。

彼女の後ろには人の流れがあった。
忙しない足取りで歩く人々。カゴに商品を詰め込む母親。
恋人とふざけ合いながら歩く若者たち。
けれど、彼女のまわりだけは、どこか音が吸い込まれてしまったように静かだった。
まるで彼女の存在が、この店内の時間軸をわずかにずらしていたのかもしれない。
僕はほんの数秒、その静けさの中に立ち尽くしていた。

その後、彼女はなにもなかったかのようにまた歩き出した。
小さくため息をつき、指先でスカートのすそをそっと整えた。
その仕草は、まるで誰にも見せたくない心の痛みを、
そっとたたんでポケットにしまうようだった。
僕はそれ以上何もできなかった。
ただ、その後ろ姿を、たったひとつの風景として胸の奥に焼き付けた。

何が彼女を立ち止まらせたのか。
今もその答えを僕は知らない。
でも、そんな問いが残ってしまうほどに、
彼女の存在は、この平凡な午後にぽっかりと空いた深い空白だった。

非日常の世界をぜひお楽しみください。
枚数：5枚
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